西荻窪駅南口の仲通商店街を抜けて乙女ロードを100m程歩いた場所に、2017年8月にオープンした『パティスリー・ロータス』だ。持ち帰りのケーキや焼き菓子の他に、店内で出来立てのデザートをいただける人気店だ。西荻窪の人々の応援を受けて、今年9月に開店2年目を迎えたパティスリー・ロータスのオーナーパティシエの原島未希さんの魅力をご紹介。

カウンターデザートの3つの甘〜い楽しみ

一般的な洋菓子店では、出来上がったケーキや焼き菓子などを販売しているが、パティスリー・ロータスは、お客様の目の前でデザートを作るカウンターデザートも提供している。東京でも珍しいカウンターデザートは、注文したデザートをどんな風に作るのか見られること。デザートが出来上がるまでの待ち時間も至福の時になること。テイクアウトでは味わえない冷たいものと温かいものを組み合わせたデザートをいただけること。そんな3つの楽しみがある。オーナーパティシエの原島未希さんが自ら作る、視覚も香りも極上のカウンターデザートのメニューは10種類。パンケーキやフレンチトースト、アイスやクリームと合わせた一皿などに加え、季節ごとに様々なメニューがある。中でもお薦めは、定番メニューの『クレープシュゼット』。オレンジの皮が手際よく螺旋状に剥かれ、フランベで上がる炎など、カウンターデザートならではのパフォーマンスを楽しむことができる。カウンターデザートの醍醐味を楽しんでみてはいかが。

温かい爽やかなオレンジソースを浸したモチッとした食感のクレープをバニラアイスと一緒にいただくと、甘さと酸味のちょうど良いバランス。温かいクレープと冷たいアイスの組み合わせは、カウンターデザートだからこそ味わえる贅沢なおいしさ。カウンターデザートのメニューは、クレープシュゼット(900円)、モンブランカシス(1200円)、マンゴーのパンケーキ(1200円)、キャラメルナッツパンケーキ(1200円)、チョコミントパフェ(1300円)、桃とロゼのパフェ(1300円)、和パフェ(1300円)ほか。原島さんの一番のこだわりは、デザートに盛り付けるアイスクリーム。バニラエッセンスを一切使わずに、生のビーンズを使用している。そんな自慢のアイスクリームは、プレーンのバニラをはじめ、桃や胡麻など約15種類。東京でも珍しいカウンターデザートを召し上がれ。

人生の分岐点となった2つの出来事 東日本大震災と神楽坂での出会い

東京都八王子市出身の原島未希さんは、立川の製菓専門学校を卒業後、有名洋菓子店に就職。工場勤務を経て六本木の本店で、夢に見たパティシエとして働き始めた。約2年半の月日が経った3月11日、東日本大震災が起こった。その影響から店の売上が激減。まさかの本店が閉店に追い込まれた。職を失った原島さんは、友人を頼って名古屋へ。薦められるがままに大型量販店に店舗を構える食品会社で働き始めた。そんな暮らしの中で、両親の体調不良から名古屋と八王子を行き来することになる。仕事と看病、長距離の移動。体力的にも精神的にも疲れを感じ実家に戻ることに。仕事探しの為に、運転免許証を取得したり、パソコンを学んだりしながら、幾度となくハローワークへ足を運んだ。そして、とある会社の事務職に雇われることが決まった。そんなある日のこと、一度は訪れてみたかったカウンターデザートを提供する神楽坂の『アトリエコータ』を訪れた。この時、原島さんは、人生を決定付けるあるものに目を留める。パティシエの求人ポスターだった。日を改めて応募し面接、そして、採用された。一度は諦めたパティシエの職に再び就くことができたのだ。アトリエコータの№2を目指し、修業の日々が3年間続いた。そんなある日のことだった。友人から西荻窪に手頃な空き店舗があることを知らされた。いつかは自分の店を持ちたいと思っていたことから、何かに導かれるかのように2017年8月にパティスリー・ロータスをオープンした。

写真=修業時代の一枚。アトリエコータのオーナーパティシエの吉岡浩太さんと。吉岡浩太さんは、結婚式場やホテルなどで勤務を経て、2012年に「アトリエコータ」をオープンした

家族のような人々が大好き 西荻窪のゆったりとした時間と

友人から西荻窪の空き店舗を紹介された原島さんは、幾度となく西荻窪を訪れた。西荻窪駅南口の仲通商店街から延びる乙女ロードの人通りや周辺店舗の下調べを行った。約10坪の店舗の賃貸契約をするまでに、そう時間はかからなかった。個性豊かな個人経営の小さな店舗が軒を連ね、隣町の吉祥寺や荻窪とは違うゆったりとした時が流れていることなど、西荻窪に一目惚れをしたかのようだったという。満を持して店舗を構えた原島さんだったが、開店直後は、独りで店を切り盛り、寝る時間もなく精神的にも体力的にも限界を感じた。そんな時に心の支えとなったのが、地元西荻窪の人々の声だった。「美味しかったわよ」「また買いに来るわね」「頑張ってね」など、我が子のように優しく励ましてくれた。そんな地元の人たちに美味しいケーキやデザートを食べていただくことが恩返しと思いながら、2年の月日が経ったという。ちなみに店の名前は、大好きな蓮の花(ロータス)から命名した。パティシエとして、西荻窪で綺麗な花を咲かし続けて欲しい。


テイクアウトケーキ 手前:抹茶ジョコンドにホワイトチョコとバタークリームをサンドした抹茶のオペラ(500円)、ラム、ブランデー、グランマルニエを浸み込ませたパン生地に果実をあしらったサバラン(510円)ローズヒップティとロゼスパークリングワインのローズヒップワインゼリー(300円)

焼き菓子 右:レモン風味の西荻マドレーヌ(190円)、左:ピスタチオ、くるみ、マカデミアナッツ、ヘーゼルナッツ、アーモンドをトッピングした、生地にチョコチップとオレンジコンフィを練り込んだブラウニー(290円)

パティスリー・ロータス

Patisserie Lotus

住所:東京都杉並区松庵3-37-23 シマビル1階

電話:03-5336-3207

ホームページ:https://www.patisserie-lotus0803.com/

Instagram:https://www.instagram.com/patisserie_lotus/?hl=ja

営業:10:00~20:00(カウンターデザート)13:00~18:00 

休み:不定休(HPに記載)

問合せ:lotus0803miki@gmail.com

【編集後記】

有名洋菓子店が閉店して職を失い名古屋に移り住んだ時も、八王子の実家に戻りハローワークで職探しをした時も、本当はパティシエになりたいという夢を諦めていなかったのだと思う。だから神楽坂の洋菓子店へ導かれたのだ。そして西荻窪に店を構える。Dream come true(夢は叶う)…原島未希さんにピッタリな言葉だ。はたせいじゅん